をしたくて最近ずっと悶々考えてたんですが、連載にする気は起きず、かといって単発にするには設定を濃くしすぎてしまいました。
ので、基本のなれそめなどそこそこ連載してから
そのあとはかいつまんで書きたいところのみほろほろ書いていく感じにしようかなあっと思ってます。
美大パロシリーズ。
プロローグ書いたは良いのですが見切り発車も良いところなのでひとまずブログに乗せます。
一枚きっちり絵を書いたらギャラリーに格納しますだ。
ちなみに小説です。久々に書いたので楽しかった。
興味ある方は続きからどうぞですよ。
ので、基本のなれそめなどそこそこ連載してから
そのあとはかいつまんで書きたいところのみほろほろ書いていく感じにしようかなあっと思ってます。
美大パロシリーズ。
プロローグ書いたは良いのですが見切り発車も良いところなのでひとまずブログに乗せます。
一枚きっちり絵を書いたらギャラリーに格納しますだ。
ちなみに小説です。久々に書いたので楽しかった。
興味ある方は続きからどうぞですよ。
夜明け前に降り出した雨が、古びた木造のアパートの窓を叩く。
青白い、煙るような雲に覆われた空が大陽を遮っているから、南向きの部屋でもなんだか薄暗い。まるで日を一周またいで日暮れのころのようだ。
時間感覚が混乱しそうな六畳一間の部屋の中で、黒崎一護は目を覚ました。
布団も敷かず。畳の目を頬に写し取って。
「…ぁあー…。」
やっちまった。
そう言わんばかりの声色は、寝起きの頭にどしりと響いて、一護は顔をしかめた。
目の前の座卓に置かれたノートパソコンが、そんな一護をあざ笑うかのようにキュルル、とディスクを回した。
ぎしりぎしり、と古くなった木が鳴く音に不快感を露にしながら、雨粒がとろとろと落ちていく窓を目一杯開く。ベランダは無く、申し訳程度の鉄格子が不安げに取り付けられただけで、他は物干と室外機が同じく雨に濡れていた。
どれだけ空に目を凝らそうともそこに光が差す気配はない。
ならば夕暮れにでもならないだろうか。それなら少しはあきらめがつくのに。
そんな馬鹿馬鹿しい事を考えながら、部屋の壁掛け時計を睨みつけるも、8時36分。始業まであと24分。あきらめるには早い、けれどやり残してしまった事に手を付けるには遅い、そんな時間だった。
ンガー!と変な声を上げながらその明るいオレンジの頭をガシガシと苛立たしげにかきむしっていると、からからとこちらよりかは幾ばくか軽やかな音を建てながら、下の階の窓が開かれた。
「…ム、一護か。」
「おーチャド、はよっす。」
雨の様子を伺いにでも来たのか、下の階に住むチャド…茶渡泰虎がわずかに上をみあげながら小さく腕を上げた。挨拶への返事らしい。ほぼ毎日繰り返される行為のため、二人にとってこれでも丁寧な方である。
「なんだ、顔色が悪いな…」
「あーー、徹夜で課題片そうとしたらそのまま床で寝てた。」
「…終わったのか。」
「野暮な事聞くな。」
終わってたらあんな奇声発しねえよ、と暗に伝える。
課題の締めまでいくらか日はあるが、それでも詰めるためには何日だって無駄には出来ない。睡眠時間なんてものは真っ先に削られる最たるものである。だというのにすやすやと寝てしまっては取れる疲れも取れなかった。
そのまま挨拶もそこそこに一日の準備を始めようとすると、一護、と茶渡呼びとめられた。
「ちょっと頼みがあるんだが良いか」
「おう」
「今日から一週間学校に行けないんだ、急用で。それで、」
「…おう…」
妙に神妙な面持ちで告げる親友に何事かと躯を固くすると。
がさり、と乾いた音を立てて、茶渡が紙袋を掲げた。
近所の食料小売店のロゴマークがいやに物々しく映る。
茶渡の無骨な手に抱えられているために何やら小さくも見えるが。
そして、茶渡が口を開いた。
「その間、昼ごろでいいから、絵画棟前の芝生に住み着いてるねこ達にえさをやってくれないか」
「…お、おう…?」
茶渡泰虎は、誰より何より、小動物を愛する男だった。
あわてて身支度を整え、アルミボディのパソコンをケースに詰め込んで慌てて出かけていった一護を見送りながら、これから一週間、自分のせいで猫達が飢える事無く日々を迎えられる事に安堵していた茶渡だったが。
ふと、そういえばと一護に伝え忘れていた事があるのを思い出してしまった。
…ム、と彼が悩んだり口をつぐんだり返事をしたりその他諸々の瞬間に活用する口癖を漏らしながら、大きな派手なシャツに腕を通す。
携帯で伝えるべきかどうか一瞬悩んだが、その思いはすぐに畳まれ、スマートフォンはデニムのポケットへとしまわれた。
「まあ一護なら大丈夫だろう…」
特にそんな悪い事ではないしな、と彼はそのひと言でその悩みをすべて振り切った。
それが、すべての始まりに繋がるとは、この時雨の露露程に感じ取ってはいなかったのだけれど。
空座美術大学、通称「空美(ソラビ)」。
そんな名称のおかげで、構内至る所に空をモチーフにしたデザインが散見されるが、如何せん今日は雨だ。
午前中、ゼミでのディスカッションは、普段の行いが功を奏して何事も無く進んだのだが、そのせいで話が弾んでしまい、なぜだか自分の作業量が増えていた。どう言う事だ。
こういうときグループ制作は理解できても納得はしたくないな、と一護は己の断りきれないお人好しさ加減に腹立たしい気持ちになる。
まだこの大学の門をくぐって一年も立っていないけれど、その勤勉さと持ち前のバランス感覚のおかげで周りに実力を認められてしまったが故の悲劇である。
やりたい事とは言えど己の躯を酷使するのは辛いので、結局のところ楽しさと苦痛はフィフティ・フィフティであった。
終業のチャイムの前に解散と相成ったので、仲間からの昼の誘いもそこそこに断って、茶渡科tら預かった紙袋を持って一護はひっそりと芝生へ向かう。
構内にはいくつか緑地化された空間があるが、絵画棟の芝生はその中でもひときわ目立って大きい。
芝生どころか鳥小屋や池までついてくる豪華版である。
どうにも日本画学科の学生達がモチーフのために作った空間らしく、季節の花が咲き乱れたり柵の中を鶏が闊歩したり錦鯉がえさを求めて口をぱかぱかさせていたりと何ともにぎやかな空間だ。
にぎやかな空間だが、奥まった場所でもあるので人はほとんどおらず、ある意味で隠れた憩いの場となっていた。
あの図体のおかげで誤解されがちだが、茶渡は日本画学科の学生だった。
よく初見で「彫刻学科ですか?」と聞かれるのはほぼ日課らしい。かく言う一護も予備校時代から茶渡を見てきたが、やはり彫刻学科なのだと思って接していたらなぜか日本画に入学していて度肝を抜かれた覚えがあった。
小動物好きの彼の事だ、昼の休憩は大概ここで取っては鯉にパンの耳を与えたり鶏と戯れたりしていたのだろう。
そしてその間にそこへ住み着いた猫と仲良くなってしまった、と。実に茶渡らしいエピソードだった。
空美には猫が多い。それも野生化していて、普段はどこに隠れているのか全く姿を見せないのに、それを手名付けるのだから対したものだった。
歩き慣れない絵画棟の木立の合間を縫っていくと、花に包まれた緑色の空間が現れてくる。
6月のためにタチアオイとアジサイが乱れ咲き、その合間を縫うようにして野草が目一杯に露を受け止めていた。
ざあざあ、と雨の音が草に響き、水面に木霊し、さしていたビニール傘に雨粒がぶつかってぱちぱちと踊った。
その時、ニャア、と一声何かが鳴いた。
猫だ、やっぱりこんな雨でもくるんだな。そんな風にぼんやりと考えて、庭園に足を踏み入れた。
ナア、という猫の鳴き声に続いて、くぐもった笑い声が耳に届いた。
はじめ、でかい猫がいるのかと思った。
けれど、こんなでかい猫は猫じゃねえと、改めて前を見る。
そこにいたのは、小さな女だった。黒い、髪の。
その人影は傘もささずにうずくまっている。猫を抱えたまま。
おいおい、そんなに動いてはぬれてしまうぞ、ばかだなぁ。
背後に立つ一護にはかけらも気がつかず、その少女は自分が濡れる事は厭わずに猫とじゃれている。
濡れた地面に片膝をついて、少し背を丸めて、雨から猫を守っているようだった。
(お前が濡れるだろ、馬鹿か。)
ふっと、雨が止んだ気がした。
ん?と疑問に思って空を見上げるも、そこはまだ曇天の世界。けれど、明らかに異質なものがあった。
ビニール傘だ。一体どこから。
気付けば後ろに気配がある。ああ、いつものあいつがやっと着たのかなあと、改めて後ろを見ると。
知らない、オレンジ色がそこにいた。一瞬、大陽が差し込んだのかと思うくらいの明るさでそこに。
その顔は、なぜか少し怒っていた。
振り向いたその女の瞳は紫色だった。周りのアジサイの色でも反射してるのかと思ったけれど、どうやら実際の色らしい。
カラーコンタクトのように不自然な虹彩ではなく、生まれつきのようで、引き込まれそうなほどに澄み切って大きかった。
ぽかんとこちらをみあげたその女は、スイッチが入ったように意識を戻すとそのうすっぺたい薄桃の唇をうっすらと開いた。
「…誰だ?」
その言葉に、一護の眉間がピキリと動いた。
言うに事欠いてそれか。
「茶渡かと思ったら違ったのだな。というか何をしておる、傘もささずに。」
それはお前だろ。傘さしてねえのはお前に差してやってるからだ。
ていうか、茶渡のヤロウ、
「こんなやつまでいるなんて聞いてねえぞ…!」
「むむ、こんなやつとは何事だ、たわけ!」
茶渡の言い忘れていた事。それこそが。
この黒い髪の女、朽木ルキアが。
猫にまぎれて庭園で待っているという事だった。
「それよりオレンジ頭の貴様。茶渡の代わりのようだが、私の昼飯は持ってはおらんのか」
「知らねえよ聞いてねえよ自分で買えよ!」
それも、他の猫と同じく、腹を空かせて。
一護は先ほど隅に追いやった、こいつは大きい猫のようだという第一印象を、今度は確かに認識した。
私だけが楽しい、そんなシリーズ。
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